ハクビシンを食う

mikihito

2010年03月03日 02:58

今、何とも言えない気持ちでこのブログを書いている。
昨日、小説「食堂かたつむり」を読んだ。
そして今日、ハクビシンという動物を殺して、食った。



ハクビシンとはネコ目ジャコウネコ科の動物。昔から日本にいたのか、
外来種なのかははっきりしていない。ただし化石が見つかっていない
ということは、やはり外来種なのではないか。

こいつは意外と可愛い顔をしている。けれども農家の方々、特に果物
を育てている方々にとっては「害獣」である。
なんせ片っぱしから果実を食い散らす、大変やっかいな存在なのだ。



これはイチゴのハウス内に現れたハクビシンの足跡。収穫を明日に控え
たイチゴの、それも一番おいしい部分だけがいくつも、やられた。

そのやっかい者が静岡の猟師さんのワナにかかったというので早速、足
を運び、食させていただいたというわけだ。



ついさっきまで震え、我々を威嚇していた生きもの。その生きものの命
が「処理」された。



手際良く肉をさばいてゆく猟師、松永さん。生きものが、食いものに
変わっていく。最初はとても見ていられないだろうと思っていたのに、
不思議とその感情が変わっていくことに気づく。
哺乳類だって、魚をさばくことと何ら変わらないことに気づく。

そして、血を抜き肉を削いでいくその作業が、とても神聖な儀式のように
思えてくる。命をいただくというのはこういうことなのだ。



ハクビシンのロース。きれいでうまそうだ。これを見て「気持ち悪い」なん
て言う人は1人もいないだろう。焼肉屋でよく見る姿だからね。要するに
我々は、命を殺す光景を、あまりにも普段見慣れていないだけなのだ。



そしていよいよ、ハクビシンの肉を食してみる。その感想は・・・うまい!
少しクセはあるのだが、決してイヤなクセではない。むしろその野趣あふれる
味は、噛めば噛むほど旨味がにじみ出てくるようだ。

きっとこの味はハクビシンがいつも果物を食ってるからだろう。その果物を
食われた農家の皆さんの積年の恨みを、俺は何度も何度も咀嚼した。



けれども、あのハクビシンの瞳が、どうしても忘れられない。
クリクリと可愛らしく、それでいて怯えと怒りが同居していたあの瞳。
あの哀れな瞳を見た時、殺すことを、食うことをためらったのは確かだ。

しかしそんな俺に、猟師の松永さんの深い言葉が響く。

「我々も命を好き好んで殺しているわけじゃない。
 けれど、被害を出す動物を放っておくわけにはいかない。
 捕らえたものを放してしまえば、どこか違う場所でまた被害が出る。
 だから殺すことは仕方がない。 
 ただ、それを食ってやることが、命をムダにしないことが、
 せめてもの供養になる。」

・・・心に、刺さった。

ハクビシン、ごめんな。でもうまかったぞ。・・・ありがとな。

鉄崎幹人公式HP http://www5.ocn.ne.jp/~tetsu/