日本の秋の恵み

mikihito

2014年10月09日 01:54

岐阜県加茂郡白川町で秋の恵みをいただく。



収穫した稲を天日で干す、「はざかけ」の光景。



ここで獲れた米は「赤とんぼ米」という名前で売られている。
完全無農薬、かつ化学肥料も使わない、有機栽培のお米だ。

ネオニコチノイド系農薬が原因で激減してしまったといわれるナツアカネ、
アキアカネ。けれどもこのあたりでは、彼らは普通に秋空を舞っている。



トマト、ピーマン、ナス、おくら、じゃがいも。すべて無農薬栽培だ。なおかつこれらは全て、
固定種」といわれる伝統野菜、地場野菜である。固定種とは、その地域の気候風土の中、
何世代にもわたって選別・淘汰され、その地域の風土に合った種として固定化した物のこと。

昔の野菜はほとんどがこの「固定種」だった。農家さんは、野菜を収穫した後に来年用の
種を自家採取し、次の年へとつなげていった。手間はかかるが、その分固定種の野菜は
味がいい。大きさもふぞろい、形もブサイクだが、野菜本来の味がしっかりつまっている。

対してF1種、というのが、交雑によって生まれた第一代目の子を意味し、「一代雑種」とも
言われる。固定種に比べF1種は、常にそろった品質の野菜ができ、生育も早く収量も多く、
農家にとってはメリットもある。結果、種苗業界は競ってF1種を開発するようになった。

けれども異なる性質の種をかけ合わせて作られた一代目雑種のF1は、その一代限り。
次の年に同じ性質を受け継ぐことはできない。ということはつまり・・・・農家は毎年毎年、
種苗会社から種を買い続けなければならない、ということである。
結果、世界の大手種苗会社や農薬メーカーはボロ儲け・・・という仕組みが出来上がった。



菌床栽培ではなく、原木栽培のしいたけ。これを作るための森の間伐も行われている。



これ、リスの歯型だって。俺、知らんかったけど、リスってしいたけ食べるんだ・・・。



なめこも採らせてもらった。しいたけの原木はコナラ、アベマキ、クリなどだが、なめこは桜。



これも里山の秋の恵みだよね!



茶豆も今が旬。夏のビールのシーズンより、断然今が美味しいらしい。



先ほどの「赤とんぼ米」をかまどで炊く。なんせ新米だからね!



そしてすべての料理が完成~!!完全無農薬、かつ自給率100%のご馳走だ。



新米となめこの味噌汁。噛めば噛むほど甘味がにじみ出るお米。
最近、本気で思う。この世で一番美味しいのは、お米と味噌汁じゃないかって。



すべて固定種の蒸し野菜。・・・・・マジでうまかった。こんなにしっかりした味の野菜を食べた
のは久しぶりかもしれん。いや逆に、普段我々が食べてる野菜って、一体なんなんだろう。

綺麗で、統一感のある見た目ってそんなに大事なの?葉っぱが虫に食われてることって
そんなにイヤなの?・・・そんな農作物に対する価値観や、消費者意識を変えていかないと、
いつまでたっても日本は「農薬大国」から脱却できないだろう。

1000粒に7粒、黒い米が混ざっただけで等級が下がる国。・・・・・それが今の日本だ。



原木栽培のしいたけって、まず香りが松茸に似てる。そして肉厚で味も抜群にうまい。
今回、美味しい農作物をいっぱいいただいて、いろんなことがわかってきた。
それは・・・米や野菜が本来持っている力を引き出すことが、いかに大事か、ということだ。

原木しいたけや、化学肥料を与えない米や野菜が物語っていた。大事なのはテクノロジー
じゃない、ってことを。やっぱり人間は、自然の力にはかなわない、ってことを。



この日いただいた美味しい秋の味覚は、すべてこの2人が作ったものだ。
ともにまだ30代の西尾さんと伊藤さん。2人ともこの地の出身ではなく、脱サラして農業を
始めた。けれども無農薬・有機・固定種栽培など、美味しくて安全な農作物を提供するため
の努力はスゴい。そして実際、2人が作ったものは本当にうまい。

これからの農業を支えるのは、哲学とこだわりを持った若い人たち。これは間違いない。



今後TPPによって、日本の農業は大きく変わる。JAの改革も必要だし、今まで通りのやり方
では淘汰される農家も増える。そして大規模生産した、さらに値段の安い果物や、遺伝子
組み換えした、さらに形の美しい野菜がスーパーに並ぶことだろう。・・・・・・けれども我々が、
本当に選ぶべき農作物とは何なのか?
そしてそれを消費者が選ぶこと以外に、日本の農の未来を救う道はないのではないか?


(10月8日。皆既月食の秋の夜。)

本当に美味しくて安全な秋の恵みは、実はとっても身近な所にあるはずなのだ。