もしかしたら日本は近い将来、日本でなくなってしまうかも知れない。
TPP（環太平洋戦略的経済連携協定）に加盟することになれば、だ。

景気がどん底まで追い詰められたアメリカ。そんな中打ち出されたオバマ
大統領の「５年以内に輸出を倍増」する計画。自国だけに都合のいいように
策略された協定に、日本の「利益至上主義」の経団連が旗振り役となって、
国民にはそのメリットも、そして恐ろしいデメリットも、何も知らされないまま、
ただ尻尾を振ってついてゆく政治家たち、という構図。

もしこのまま交渉のテーブルに着けば、いったい日本にはどんな未来が
待ち受けているんだろう。

①日本の農業は壊滅的な打撃を受ける。

　農水省の試算によると、食料自給率は１３％まで下がる。
　この先、地球温暖化で食糧流通が滞り輸入農作物が入ってこなくなった時、
　・・・もう時すでに遅し。深刻な食糧不足に追い込まれることになる。

　かつての輸入木材の自由化が、日本の林業の衰退を招いた。結果、日本の
　森林が荒廃。農地にも同じことが言えるだろう。

②国民皆保険制度がなくなるかも知れない。

　医療の世界にも利益至上主義が導入される。保険の効くものは質の悪い、
　最低限の医療。高度な医療を受けたい人は高い自由診療を受けてください、
　ということになる。つまり、貧乏人は死ね、ってことだ。
　アメリカでは国民の１５％が、無保険である。

③失業者の増加、デフレの加速。

　自由貿易はモノだけではない。人も含まれる。そのため外国から低賃金労働
　者が大量に入ってくる。当然日本人の失業者が増えることになる。

　TPPによって雇用が増える、というのは日本人のことではないのだ。

　GDPだけは増えるが、これは企業が儲けてるだけのことであり、労働者の給
　料は下がる。それに伴い、物価も下落。悪夢のデフレ・スパイラルだ。

　ただし、金持ちはより金持ちになる。強大な権力を持つ企業が増え、すさま
　じい格差が生まれるだろう。

④遺伝子組み換え食品の増加。いや増加ではなく、蔓延。

　遺伝子組み換え大国であるアメリカは、当然のごとく「表示義務」の撤廃を
　迫ってくる。日本人が遺伝子組み換え食品に対して、（当たり前の）拒否
　反応を持っているからだ。その表示義務がなくなれば、我々は知らず知らず
　のうちに、遺伝子組み換え食品を食わされることになる。未だ、その安全性
　も証明されていないのに、だ。

　遺伝子組み換え作物の種子が日本に入ってきたら、もう後戻りはできない。
　
　種子は風にのり、日本の各地に定着してしまうからだ。これはDNA汚染であり、
　重大な環境破壊であり、もっと言えば「命への冒涜」である。

　さらに牛肉などの月齢制限や、食品添加物などの安全基準が相当ゆるくなり、
　健康への被害も懸念される。

⑤何より、アメリカ型自由主義による、日本という国家システムの崩壊。

　これだけは本当に覚えておいてほしい。国民を守るための法律や制度が、利益
　至上主義のアメリカ企業（ここには日本企業も含まれる可能性がある）の都合に
　よって、いくらでも変えられてしまう恐れがある、ということだ。

　そこには正義など存在しない。あるのは成長だけを追い求める企業論理　
　だけである。そして裁かれる場所は日本国内ではない。誰も日本の味方なんか
　してくれない。でもそれはしょうがない。だってTPPに加盟してしまったんだから。

　どんなに理不尽で不公平で、正義のかけらもない要求でも、国際裁判になれば
　日本は負けて莫大な賠償金を払わなくてはならない・・・それがTPPである。

　　　　（TPPの危険性についていちばんわかりやすいサイトはこちら）
　　　　　http://luna-organic.org/tpp/tpp.html）



今、大切なことはTPPの危険性についてもっと知ることだ。経団連のいいなりの
政治家やメディアからは、都合のいい歪曲された情報しか入ってこないだろうが。

TPPは決して農業だけの問題じゃない。ましてや野菜やクルマが安くなるからいい、
なんてちっちゃな話ではないのだ。今後の日本の国としてのあり方、そして日本人
としての生き方を左右される、重大な問題である。

開国か、鎖国か。はたして今、攘夷論者はどれくらいいるのだろう。

けれど、幕末の開国は自主権を勝ち取るための戦いだった。しかしTPPはその逆、
「自主権を無くす」ための開国に他ならないのだ。



今、立ち止まってちゃんと考えてみよう。「自由って何だろう？」ってことを。

目の前にある自由は、本当の自由なんだろうか。それぞれの立場から考えただけ
の、「エゴイズム」でしかないんじゃないか？

自分さえ良ければいい。誰かが傷ついたってかまわない。それが自由なのか？

自由には責任が伴い、権利には義務が伴うはずだ。義務と責任を置き去りにした
自由、その一端が今のクレーム社会であり、訴訟社会である。

自由より大切なもの。今後、世界に求められるのは自由ではなく、「公正」な貿易
である。



そして今、もう一度考えてみよう。「本当の幸せって何だろう？」ってことを。

ひと握りの金持ちだけが富をむさぼり、その影で弱者はどんどん切り捨てられる。
そんなものが本当に幸せな社会なのか？

TPPは金を生み出す。と同時に間違いなく、格差を生み出す。そしてそれは
続いてゆく。この先、何年も、何年も。
今を生きる我々は、はたして未来の子供たちに、何を残そうとしてるんだろう。

今まさに、日本人一人一人が、今後の生き方を決める決断の時である。